零号機

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土曜日の夜は零号機で古町に唄いに出た。

唄い始めた頃、フォークギターの事なんかさっぱり分からなかった。だから、なかなかメインギターが定まらなかった。

人と同じのは嫌だし。でも何を選べば良いのかも分からなかった。



グレッチのフォークギターに憧れていたけれど、楽器屋にも売っていなかったし、実物なんか見た事もなかった。

買っては売りの繰り返しの中で、たまたま知人を通じて手に入れたグレッチが、零号機だった。






6022C型ランチャー。

グレッチの新品は高い。マイナーブランドの不人気機種だから、中古はあまり出回らない。

更に大吾が欲しかった青系は希少で。でも全然大切に扱われていなかったのか、手に入れた時は酷い状態だった。



何度もリペアしてもらい、様々な改造も施されている。まさに零号機、プロトタイプと呼ぶに相応しい。

グレッチも何本か買っては売りを繰り返したが、最初に手に入れた零号機は未だに手元に残っている。






今、フォークギターはGibsonの弐号機。エレキギターの初号機は、GRETSCHのHigh land。

この二本がメインで、零号機はサブ化している。でもとても大切なギター。



零号機を抱えて多くの夜を越えてきた。思い出とか、過去とか、そんな簡単に言葉で言えない出来事や夜が、たくさんあった。

嬉しかった事もあるし、時には誰かと楽しく唄い明かした夜もあった。その何倍も苦しい時があったし、惨めな思いもした。






悔しくてぶっ叩いたり、荒々しく扱ったりもした。もう唄なんてやめちまおうと、長岡駅の地下道に放り投げて帰った事もあった。

高速上がる直前に我に帰って、慌てて取りに戻って。一人、夜の地下道で小声でギターに謝って、持って帰ってきたんだったな。



仲間やライバル、恋した人に向けて、このギターで一体どれだけ唄ってきただろうか。今夜も色々想いたかったので、零号機で。

弐号機も大切だし精度も高くて、唄には合うけれど。やっぱり感情を出しやすいのはグレッチだ。9弦化もされているし、抑から弾きにくく扱いにくいギターだけれど。好き。うん、好きだな。






変わりゆく、街で爪弾く、青ギター。







本日の逸品・零号機




11

冬の先の季節

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今年の冬は雪がたくさん降った。あれからそんなに経っていないけれど。

あんなに降り積もったあの雪が、まるで嘘の様に消えて。



気が付けば卯月も中旬へと差し掛かっている。

昨日の雨が夢だったかの様に、今日は青空が広がっている。






三寒四温どころの話ではなく。今年は寒暖差が大きい。

車のエアコンも冷房にしたり暖房にしたり。



いつもより早めに色づき始めた桜の花々も、暖かさと寒さに交互にさらされて。

立つ場所に恵まれなかった花は、咲きながら散っている。






まるで始まりと終わりを混ぜた様相を呈している。

それを見て、何だか哀しい様な気持ちにもなるけれど。



でも桜も、人を喜ばす為だけに花を咲かせる訳じゃない。

生きている全ての命は、そのものが生きる為にある。






青い空は好き。綺麗だから。それと同じくらい、雨音に包まれた世界も好き。キラキラしたもの感じられたら、世界は綺麗だ。

いつでもそれを感じていられたらな。上手く、出来ないけれど。



花は散るけれど。散れば見えなくなるけれど。咲かなかった訳じゃない。

一つの冬を終えて。当たり前だけれど、春があって。怖いと思う事があっても、やっぱり自分で良かったと思う。






柔らかな、雨に抱かれて、散る桜。







本日の逸品・歩道




3

プロフリーター

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手帳に書き込みたくないくらい、予定がカチカチな大吾さん。
売れっ子みたい。売り上げの出ない予定ばかりだけれど。


四月になれば落ち着くはずだったのに。まぁ、暇よりはマシか。色々考えなくて済むし。
といっても…考えるけれどね。でも突き詰める余裕が無いのは、時に救いだ。





さて。
世の中には色々なサービスがある。利用すれば便利で、当然対価は発生する。
自分では手に負えない事もたくさんあるし、頼んだ方が良い事もある。


でも。
お金も時間も余力が無いのも事実だけれど。出来る事は自分でやりたい。
音楽と一緒で。やってみると、意外と出来る事ってあるんだよ。





大吾はこんな顔で夏でも冬でも唄ってますが、意外と頭良いのです。
ストレス耐性も筋金入りですもの。やれば出来る子。


褒められて伸びるタイプじゃないのが、タマに傷だけれど。
…タマに傷って怖いな。致命的な雰囲気だ。致命的でない事なら、大体の事は楽勝だ。





でも1日は24時間しかない。身体も一つしかない。
どうしても物理的な無理が生じる。


だから人並みに忙しい気もする。慣れない事をしていると、特に。
疲れた様な気分になる事もある。極、たまにだけれど。多分、気のせいだけれど。


まぁ、ヒマよりいいぜ。





新しい、会社が一つ、出来ました。






本日の逸品・シチュー



6

美しき半日曜

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日曜日。そうか。日曜日なのか。晴れのち雨、時々、雪。夏以外の季節を全て味わえるお得な一日だった。

そんな今日の半日。何事も循環が大切だ、という事について身を以て考えてみた。



車のエンジンもライダーベルトも、リサイクルも。

需用と供給も、商売も仕事も、基本は回転だ。季節も時計の針も回転だ。






人の身体も、基本は血の巡り。そこに澱みが生じると、色々問題が発生するらしい。

医師も言っていたし、過去の「大吾完全に沈黙」時を思い出しても、体感的にそうだったなと思う。



血管を拡げ、血の巡りを良くし、静かに過ごす。そして身体に優しい物を適量食べる午後。

ペヤングをスーパードライで流し込んだりしたい…じゃなく、流し込んだりしない。






お酒も飲まずに夜を迎え、質素な夕食後は飲み食いもせず。少量の水分を補給する程度。まるで修行僧のやうな日曜の半日だが。

悪くない。磨(みが)かれているというより、研(と)がれている感じが、良い。



明日はスケジュール欄に書き切れない程、予定が満載。

予定通りに出来ない事も分かってはいるが、少しでも早く取り掛からなければならない。






なので今夜は仕事も忘れ、とにかく休もう。頑張れ、大吾の血管。そして明日の大吾。

しかし。そんなに早く眠りに落ちられる程の体力も健全さも持ち合わせていない。なので『もののけ姫』を鑑賞。



嗚呼、アシタカもエボシも美しい。生き方が美しい。見習いたいものだ。

夜は長い。ゆっくり美しさについて考えるのも悪くない。忙しいからこそ、美しさに欠けない様に心掛けねば。



明日は頑張らなきゃ。何時から娑婆で動けるかが鍵だ。





嗚呼…。


ペヤングを、スーパードライで、流したい。







本日の逸品・DVD




0

鳴らない電話

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土曜日の夜。

一週間の終わりが近づく夜の古町で。赤いから弐号機と名付けたフォークギターの調律をしながら、少し考え事。

何だか忙しいなとか。来て欲しい連絡は来ず、あまり嬉しくない連絡が多々だなとか。



忙しい時に限って、どんどん予定が重なる。予定を入れているのではなく、入ってくるのだ。断り様が無いやつが。

断れるものは断るが…断れないやつは仕方が無い。期待にゃ応えるよ。あくまでも自分なりに、だけれど。






自分で望んで入れる予定は、忙しさよりも優先される重要なものだけ。

あいたい人と会ったり、月を見ながら一人で酒飲んだり、夜の街で唄ったり。



何がどうあっても。自分を構成する物や人や事は、これ即ち自分の一部。優先順位だの重要だのとか言う以前の、大切なもの。

忙しいくらいで大切なものを省いていたら、それこそ自分を保てない。






明日からもやる事いっぱい。根本的に怠け者なので、忙しいくらいでちょうど良い。

せっかちだし、性にも合ってる。



今週も土曜の夜に辿り着いた。何かを零しながら、それでも急かされて、拾えずに。

気付けば土曜日の夜だ。たどり着いたら、いつも雨降り。でも、それだって悪いばかりでない。きっと。






弦を鳴らしながら唄って。思い出したり、想い描いたり。唄は良い。一人でいられる。

唄は自分と聴く人の間にあってこそのものだと確信している。



でも唄っている時は、一人でいられる。

自分が誰かに何も出来る事がなくても、誰に忘れられても、そこに一人でいられるのだ。






唄はいい。唄は文化の、極みだね。







本日の逸品・千円札




6

入園式

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朝から夕方まで。今日はやけに道が混んでいる様に感じた。
五十日(ごとうび。5の倍数の日。集金や請求回りが多いとされる日)ではあるけれど。


それにしても混んでいる。何だろうと思っていたら。
とある幼稚園の前で答えが分かった。入園式だ。





おめかししたちびっ子。フォーマルな装いのパパやママ。
楽しそうに話しながら、手を繋いで歩いてゆく。キラキラしていて、見ていて微笑ましい。


日中は雨も降らず。気温は高くなかったけれど。
陽射しが注いで、入園式には良い日だね。おめでとう。





二年前。我が家の姫君も入園式を迎えた。
当時、なかなか困難な状況にあった大吾だけれど。


真っ赤なワンピースを得意気に着て。
これから始まる社会生活の第一歩を踏み出した姫の姿に、随分と励まされたものだ。





入園したてのちびっ子達に比べたら。
大人の…いや、大吾の抱える不安や苦労なんて、屁みたいなものだ。だからもっと頑張らなきゃ。


我が家の姫に、世のちびっ子達に。大人ってカッコ悪いと思われない為にも、カッコつけなきゃね。
近くにいる大人がカッコ悪かったら、子供は大人になりたくなくなる。まぁ、大吾の思うカッコ良さが、他から見てカッコ良いかは分からないが。


カッコ良く。やせ我慢でも、スマートに。





まぁ、これと言った我慢もしていないけれどね。






本日の逸品・ウェットティッシュ



10

ポイントカード

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大吾はポイントカードが好きではない。

お得なのは分かる。分かるが、邪魔なのだ。


大吾の愛用している財布はマブいが小さいので、色々入れるとパンパンになってしまう。

膨れて型崩れしている様は、美しさに欠ける。何事もそうだけれど、あるべき美しさというものがある。






なのでポイントカードは作らない派だが。

そんな大吾のお財布に唯一入っていたのが、ウオロクのパン屋さん『ボーレ』のポイントカードだ。


300円で1ポイント。9000円分買うと食パン1本もらえる。

やっと貯まった。が。コツコツ貯める(貯まる)喜びは感じなかった。向いていないのだろうか。






コツコツ貯める喜びは感じなかったけれど。

そんなに頻繁にボーレでパン買わないから、ポイントが貯まるまで、時間はかかった。


その間、ずっと大吾のお財布の中で唯一のポイントカードとして君臨していたボーレカード。

今日、ホテルブレッドという名の食パン1本(8枚切り2パック)と引き換えに大吾のお財布から旅立って行った。






春は出会いと別れの季節。この空気は苦手だ。春は苦手。綺麗で好きだけれど、四季の中で最も苦手。

今年も桜が咲き始めた。場所によってはもう満開。今年も、やはり間に合わないのか。


大丈夫。焦らなくていい。明日が来るのが当たり前ではないけれど、人生は長いらしい。

この二つは、同じくらい大切だと大吾は思う。焦らなくていいんだと自分に言い聞かせる。


苦手だけれど、折角の春だ。一句詠んでみようかな。






白い皿、ヤマザキ春の、パン祭り。



現場からは以上です。







本日の逸品・ホテルブレッド




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